■ ハーブの土は酸性?アルカリ性?
ハーブに限った話ではなく、植物にとって土は成長する基盤として大変重要です。
初めに、土には酸性・中世・アルカリ性の性質があり、このことをPH値(ペーハー)で表します。
一般的に、ハーブは弱アルカリ性の土壌を好むと言われていますが、その土地に馴染んだハーブは微酸性~微アルカリ性の環境でも十分に育ちます。
日本は多くが酸性土壌なので、ハーブの種類にもよりますが、全体的にph値の基準として6.3~7.5を目安に調整すると良いでしょう。
■ 酸性土壌がもたらす影響
ご家庭でハーブを育てる場合、多くは、お庭やプランターで育てている方が大半だと思います。
露地とは違い、プランターは土に制限があるので、より土が極端に酸性になりやすい傾向があります。土が酸性に偏ると、土は栄養を保持出来ず、水遣りと一緒に流れ出してしまうのに加え、アルカリ性土壌と同じくハーブは根が育たなくなり、根からハーブに必要な栄養を吸収できなくなります。つまり、元気がないなと肥料を施しても効果が期待できなくなります。
■ 酸性の土を調整する方法
土が酸性に傾いていた場合は、石灰資材を投入して調整します。各家庭にあったものを選ぶと良いでしょう。
①有機石灰
有機石灰には、牡蠣殻や貝殻、卵の殻を使用したものがあります。緩やかに中和していくので、植替えの時などに使用すると良いでしょう。
②苦土石灰
ドロマイトという鉱物を使用した資材で、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを含んでいます。その名の通り、マグネシウムと石灰が混ざっています。緩やかに中和していくので、有機石灰同様、植替えの時などに使用すると良いでしょう。
③消石灰
石灰石をしようした資材で、強アルカリ性です。消石灰は窒素に触れると有害なアンモニアガスを発生させるため、使用する際は、必ず肥料と同時には撒かず、植替えも最低一週間を置いてするようにします。
④草木灰
草木灰はその名の通り、草木を燃やして出来た灰です。しっかりと灰になった草木灰はアルカリ性で、即効性もあり、カリウム(炭酸カリウム:水溶性で水に溶けるとPh値10以上になる)も含まれています。また、苦土石灰や消石灰とは異なり、土が固くなりにくく、殺菌・防虫効果もある使い勝手が良い資材です。
⑤籾殻燻炭
籾殻を炭化させた資材で、ph値は8~10(まるく商店で検査した値)のアルカリ性。土と一緒にすきこむことで、緩やかに中和していくと同時に、土中の微生物が活性化することもあり土壌を豊かにする働きがあります。また、すきこまずに植物の周りに撒くことにより、防虫、殺菌の効果も期待できます。
■ ハーブが好む土
結論から先に申しますと、育てるのに慣れてない方は「通気性と排水性の良い土」を、慣れている方は「総合バランス型」の土を選ぶことをお勧めします。
全世界でハーブと呼ばれる種類は300種類以上、亜種を含めると1万近くもあるといわれており、その種類から比較的簡単に育てられるハーブと手間のかかるハーブが存在します。
そのことを踏まえたうえで、土というのは奥が深く、農作物を含む植物と同様に、ハーブは育てる環境や気候によってもベストな状態は変化するため、一概にこれが良いという断定が難しいものがあります。
特に庭先などの露地で育てるのではなく、プランターや植木鉢でハーブを育てる場合、ハーブにとってプランターや植木鉢に入る限られた土が力の源となります。そのため、植物の力の源=地力を如何にして維持していくかが重要になります。
土は空気の気相、水の液相、有機物や砂の固形物である固相の三つで形成されています。このことを「土の三相」と言います。
気相は土中の空気の層を指し、気相の割合が高い土は排水性が良く保肥力に乏しい土になります。液相は土中に含まれる水分を指し、液相の割合が高い土は保水性が高く、排水性が低い土になります。そして、固相は土中に含まれる固形物(砂・砂利・有機物)を指し、固相の割合が高い土は保肥力(腐葉土などの有機物が多い場合)が高く、排水性が低い土になります。
また、この三相の割合を合計して100%になるようにして、見やすいようにしたものを三相分布と呼び、液相と気相を合わせて孔隙(こうげき)と呼びます。
この三相分布の理想は「固相:4・液相:3・気相:3」というのがありますが、実際、植物の種類や環境、気候によって随時変化するため、断定的とはいえません。
一般的に知られているハーブは比較的にそこまで肥料を必要としない種類が多いですが、無論、他の植物と同様に栄養素は必要です。その為、全く保肥力の無い土では栄養を取れない為、少しは保肥力を持たせる必要があります。
そこで、初めの方で紹介した土をお勧めしています。
先ず、前述した「排水性・通気性のバランスを重視して選ぶ」についてですが、ここで保水性や保肥力をあまり重視しないのは、第一に土の調整しやすいことが挙げられます。
植物の根は呼吸をしており、呼吸が出来ない状況が続くと根腐れを起こしてしまいます。また、土中に余分な水分が駐留すると水が腐り、嫌気性細菌が繁殖し根を痛め枯らしてしまいます。
保水性が足りない土はこまめに水を上げれば済みますし、保水性を高めたい場合は、腐葉土やPh調整ピートモス、バーミキュライトなど保水力の高い土壌改良資材を少量、土に混ぜれば済む為、根の呼吸を維持しながら調整がしやすいです。腐葉土は保肥力もあるので、腐葉土を基軸にすれば一石二鳥です。
逆に、もともと保水性の高い土だと、通気性・排水性を高めるために、土に混ぜこむ資材の大きさや量を増やさなければならず、保水力の影響で悪化した土中環境を後から調整するのには難易度を高めてしまいます。
また、保水性のある土は水遣りに特に気を使わなければならない為、慣れていない方は、排水性と通気性のある土を選ぶと、根を傷めず後々の管理を含め、育てやすくなるのでお勧めです。
次に「総合バランス型」の土ですが、これは排水性・通気性・保水性に加え保肥力のある土のことを言い、一般的に市販されている多くの土がこれです。根張りを強化する必要がある場合は、そこにカリウムが添加されているものを。葉を強くしたい場合は窒素が強化されているものを。花や実を充実させたい場合はリン酸が強化されたものを選びます。
時々、根腐れ防止剤が入っている土がありますが、これは保水性が強化されている場合がありますので、その場合は黒曜石のパーライトや日向土、鉢底に大きめの鉢底石を多めにいれると良いです。
■ ハーブに保肥力は必要か
保肥力とは、土の電荷(-)と栄養となる陽イオン(+)が引き付けあった状態が多いか少ないかをいいます。つまり、土の電荷(-)が多い程、陽イオンを引き付けるので保肥力が上がります。
保肥力と保水性は密接に関係しています。保水性が低い土だと栄養が土中に保持出来ず、水と一緒に栄養が流れ出てしまうので、土に栄養を蓄えておくことが出来ません。
しかし、前述どおり一般的なハーブは基本的にそこまで肥料は必要としません。勿論、最低限に必要な栄養素は必要ですが、他の観葉植物と同じ量を添加してしまうと、ハーブは土中の栄養が多いと葉が肥大しすぎたり、花を咲かせなかったり、香りが薄くなったりと、栄養が多いと怠け者になってしまいます。
ハーブは少し痩せた土でストレスを与えることで香りが強くなる傾向がある為、やはり、保水性と保肥性は一番に重視しなくて良いでしょう。
※土に馴染んでいる場合。
《例外》
購入したハーブをポットから植え替える場合は、元肥、若しくは肥沃な土を使うことをお勧めします。
ポットの土は、ほとんど栄養が使われていて無い状態ですので、植替えをする場合は栄養価のある土を使うことで、根付きが良くなります。
■ 水のあげかた
水をあげているのにハーブが枯れてしまうという話をよく聞きます。プランターや植木鉢で育てている場合、その原因の多くは水遣のあげかたにあります。
ハーブには水をたっぷりと欲しがる種類と、数日から一週間に一回で満足する種類があります。
プランターや植木鉢で育てている際の例を挙げると、特に水をたっぷりと欲しがるハーブにレモンバーベナがあります。レモンバーベナは葉が薄く、まだ土が湿っているからと、水を少しあげなかっただけで炒られた茶葉のようにパリパリになり、取り返しがつかなくなります。その為、地域の気候にもよりますが、基本的には毎日、朝と夕方、夏などの気温が高い日には日陰で昼も水をあげることもあります。
水遣りの頻度が少なめで満足するハーブには、ラベンダーブリティッシュ・ロゼアやローズマリーなどがあります。この品種は過酷な環境に置くことで香りが強くなり、丈夫になるので毎日の水遣りは必要ありません。逆に水を与えすぎていると、水分を含み過ぎてむくんでいる状態が続き、湿ったまま葉や茎が柔らかくなり腐っていきます。
このように「ハーブ」ということで一括りに判断してしまうと失敗してしまうことがあるので、注意が必要です。
水やりは土壌の老廃物を洗い流したり、土中の酸素を補給する役割も担っているため、花瓶などで水耕栽培をされる方は毎日水替えをすることをお勧めします。
ハーブは他の植物と同様、特に午前中(10時頃)に光合成を活発化させます。その為、朝方に日が当たるようにすると育ちはよくなります。
ただし、日射しは土の状態と密接に関係しており、夏場などに土が湿った状態で日射しを浴び続けると、地中の温度が上昇し、土中の水分までもが温められて蒸れを起こします。そうすると、葉は日光に当り健康に見えても、根が傷んでしまうので、注意が必要です。そのため、湿地帯で育つハーブは、半日陰。乾燥地帯で育つハーブは、風通しの良い場所で育てるようにしましょう。
また、ハーブは春と夏に葉の形状が若干変わります。
春先は葉が大きく瑞々しさがあり、鮮やかな色を出しますが、夏になると葉はやや縮み硬く、色濃くなります。
これは夏の日差しに対応するため葉を防御する為だと考えられます。
ハーブは気温が下がる時期以外は日陰でも十分に育ちますので、日陰しかない場合は風通しだけは良い場所で管理するようにすると環境に強いハーブは全般的に順応していきます。
■剪定
多年草のハーブは剪定をすることで頂芽優勢から脇芽の成長へと優先順位を切り替えます。茂らせずに伸ばしたい場合は別ですが、茂らせるためには必ず剪定をする必要があります。
■切り戻し
ハーブには匍匐性や半ほふく性、直立性の植物がありますが、基本的に多年草のハーブは切り戻しをするということを覚えておくと良いでしょう。
植物は上に伸びる習性がありますが、そのままにしていると、夏から秋にかけて、只々、セイタカアワダチソウのように伸び、下葉がどんどん枯れてしまいます。これでは見た目も悪いだけでなく、茂らないまま冬を迎えてしまいます。
ハーブは夏に向けて成長期を迎えますが、この時、一気に根元から10cm程上の辺りを一気に切り落とします。
ハーブは強い植物ですので、その後、ランナーや根元、茎から次々と新芽を出していき、こんもりと茂っていきます。
■花芽摘み
一年草では無く、多年草の場合、花芽が出てきた場合は、摘み取ります。理由としては他のハーブとの交雑を防ぐ意味合いもありますが、株を弱らせないようにするという理由もあります。
しかし、オレンジミントやアップルミントなどの柑橘系のハーブは、花の香りがとても特徴的でもある為、あえて摘み取らずに楽しむのもお勧めです。
花芽を摘まずに咲かせる場合は、他のハーブとの交雑に注意しましょう。
他のハーブと交雑してしまうと、香りが薄くなり、特徴的な香りが変わってしまいます。
■根切り
側根性のハーブをプランターで育てる場合は、年に一度、土の入れ替えをするついでに、古い根を一気に切り落とします。
病気を防ぐ効果の他に、新しい根を発根させ、健康的に成長を促すこと出来ます。
ただし、直根性のハーブでは絶対にやってはいけません。
植替えを嫌うハーブと言われるのは、主に直根性のハーブで、その根を傷めてしまうと致命的になってしまうからです。
なので、直根性のハーブを購入し、植替えをする場合は、根を必ず傷めないようにしましょう。
■肥料
ハーブは痩せた過酷な土地でも育ってきた歴史がありますが、プランター栽培の場合は根を張らせるにも限界がある為、そうもいきません。
植物は主に土中の栄養を糧としますから葉の様子を見ながら少量与えます。
ハーブには虫が付きにくいと云う方がいますが、それはゼラニウムやキク科・タデ科のハーブに於いての話で、それでも基本的にハーブには虫が付くと思っていた方がいいです。どういう虫が居るかを紹介します。
ハーブにはハモグリバエという虫がつきます。
ハモグリバエは通称、絵描き虫と呼ばれ、葉の中に潜り込み絵を描くように葉を食べていきます。
一度、絵描き虫が出てくると、次々と葉に絵描き虫の模様が出てくるので厄介な虫です。
春と秋に発生しやすく、葉を全体的に傷めるので見つけ次第、なるべく早めの対策をしたほうが良いです。
絵描き虫は見つけ次第、食べられている葉を切るか摘むようにしてください。防虫ネット、または黄色い粘着テープを近くに置いておくと被害は軽微になります。
どこにいるか見つけられるでしょうか?
アオムシは厄介な芋虫で、ハーブにとっての一番の天敵です。
若い葉を狙い、ひたすら葉を食べてしまいます。写真のアオムシは大きくなっていますが、まだ小さい時は気付きにくく次の日には葉が無くなっている程に食欲旺盛で、葉や茎の色と同化してしているため、見つけにくいです。
頂芽(ちょうが)も食べるので注意が必要です。
地道に見つけ次第駆除するか、とにかく蝶々に卵を産ませないために防虫ネットか不織布をかけて防ぎます。
屋内で生育させる場合はあまり気にする必要はありません。
アオムシの天敵、アオムシコマユバチは、アオムシに寄生する虫で、アオムシは寄生されると、じわじわと体内でコマユバチの幼虫によって蝕まれ、蛹にもなれずに死んでしまいます。
コマユバチたちはコントロールされたアオムシに守られながら育ちます。
一見益虫に見えますが、葉の裏に小さな繭を並べて作るため、見た目が気になりますよね。
植物には特に害は無いものの、寄生されたアオムシは食欲が増え、葉の食害が増えるとも云われているので、見つけ次第地道に駆除することをお勧めします。
ゾウムシは大きさが6~7㎜ほどの小さい虫で、人間には無害ですが、ハーブにとっては好ましくない虫です。
幼虫は土の中に生息し、植物の根を食べ植物を枯らします。そして成虫になると、夏から秋ににかけてハーブの葉を半月状に食べていきます。
グルメな虫で1枚の葉を半分ほど残して次の葉を食べに移っていくので、被害にあった苗はスカスカになります。
本当、食べるなら1枚の葉をちゃんと残さず食べてから次の葉を食べて~。
成虫は見つけ次第、駆除してください。
土中の虫よけに珈琲カスを進める方がいますがお勧めしません。
珈琲カスはカフェインや炭素分が多いので分解されにくく、それを分解するために土中の微生物の分解のため窒素を多く使ってしまい、窒素欠乏を起こしやすくなります。
約0.3~0.5㎜程の小さなハダニは春から秋にかけて暖かい時期に活動する虫です。
水の当たりにくい葉の裏に生息しますが、次第に葉の表面に斑点状に色が透けていきます。
ハダニは野菜を含む植物全体に寄生するので植物を育てている方にとっては馴染みのあるものだと思います。
早くて2月から活動を始め、気温が20度を超えだすと増殖していきます。
しかし、恐れることなれ、弱点を知れば対処は可能です。
ハダニはとにかく水が苦手です。
なので、水やりの際に噴霧器などを使用して葉の裏に吹きかけることによって、容易に駆除できます。
ハーブを使用する時は、ボールに水を溜め、5分程浸すときれいに取れます。
ハーブは全般的に春から秋にかけて、アブラムシが付きます。
アリがハーブの葉に上り下りしているのが見えると、そこにはアブラムシが居ると思って間違いないでしょう。
アブラムシには緑色や、赤色など、様々な色をした種類が居ますが、一匹でも居ると繁殖していくので、見つけ次第、対処していく必要があります。
全部駆除したとしても、アブラムシは羽を生やし飛んでくるので厄介です。
薄めた竹酢・木酢液を吹きかけるか、地道に手で駆除していきます。
根元に銀色のシートを張るのも良いですが、羽の生えたアブラムシには効果がないので、全体を守りたい場合は、防虫ネットをかけると良いです。
その他にも付く害虫として、蛾・カタツムリ・バッタ・ヨトウムシ・根切り虫・カイガラムシ・コガネムシがあります。
特にレモングラスはバッタ。ローゼルにはコガネムシ、フェンネルロマネスコにはアゲハ蝶の幼虫が好んで葉を食べます。
また、梅雨の時期などの湿度が高い日などはキノコバエというとても小さなコバエが湧くことがありますが、ボラ土や赤玉等の土を培養土の上に厚めに撒くことで、キノコバエは卵を土に産めないため繁殖を抑制することが出来ます。